Tuesday 29 May 2012

ラ・リューヌ山 La Rhune とビアリッツ Biarritz

この日はボルドーへの移動日。 その前にもう一度山バスクと海バスクにひとっ走り。

プチ・トラン・ド・ラ・リューヌ Petit Train de la Rhune

まずはベイヨンヌから鉄道で20分のサン・ジャン・ド・リュズ St-Jean-de-Luz へ。そこから一日2本しかない(夏のピークシーズンには30分毎にあるらしい)バスに20分揺られてコル・ド・サンティニャス Col de St-Ignace で下車すると、ピレネー・アトランティックを登る登山列車プチトラン・ド・ラ・リューヌ Petit Train de la Rhuneの駅。 1929年から営業とある。
 
木製のおもちゃのような列車。 窓の代わりに茶と白の可愛いカーテンが。
 
 ほどなくピレネーの山中に。
 
こんな感じでゴトゴトと
 
登りつづけて
 
 頂上らしいものが見えてきた。
 
 30分ほどで頂上に到着。 ピレネー360度の大パノラマ。
 
頂上の建物の壁にこんなのが。峰を境にこちらはスペイン領のナヴァラ県ヴェラ・ド・ビダソア町ということか? 標高が905m。
 
そうこうしているうちに乗ってきた列車は乗客満載で麓の駅に。
 
その行先を追ってみると。麓から登ってきた列車とすれ違うところ。
 
少し離れたところで馬がのんびり草をはむ。
 
フランス側を望むと沿岸部分はよく開けている。近くに見える海岸沿いの町は多分サン・ジャン・ド・リュッツ St- Jean de Luz。 この日バイヨンヌから鉄道に乗って下りた駅だ。
 
左端の海岸線の町は多分オンダイエ Hendaye。サン・セバスティアンに行ったときにバスク鉄道に乗り換えたところだ。 もっと晴れた日にはサン・セバスティアンも見えるそうだ。
 
 
一方スペイン側を見渡すと、海も平地も見られず山間に集落のようなものがひっそりと。向こうに続く山々は険しそうだ。 スペイン人の言い分「神はフランスによい土地を与え、スペインにはよい人間を与えた。」
 
帰りの列車で乗り合わせた隣の人が鷹が大勢飛び回っているのを発見。 見ると子羊が襲われて倒れている。犯人はこの鷲。 美しい自然の中で生きる厳さ。
 

これでピレネーを地中海側と大西洋側と両方から登ることが出来て大満足。それもカタロニアとバスクという異なった歴史・文化をもった土地で興味は尽きない。
  
ビアリッツ Biarritz
 
12世紀頃のビアリッツはクジラ漁の漁港だった。17世紀中頃から徐々にクジラが取れなくなり、困った漁師たちはフランス王公認の海賊 Corsaires と化し18世紀まで物騒な時代が続いた。と、そんな頃、海辺での日光浴が健康に療養に良いということで保養地として新たな道を歩みだす。 
 
ビアリッツに決定的な変化をもたらしたのはナポレオン三世に嫁いだユジーニ妃。彼女はスペイン出身でビアリッツを知っていたため、ここにヴィラ・ユジーヌ Villa Eugenie を建て夫妻の別荘にした。 (この別荘は現在5☆ホテル、オテル・ドュ・パレ Hotel du Palais として復活) 時はベルエポック。 英国のヴィクトリア女王、スペイン王アルフォンス13世、ペルシャのシャー、ロシア皇帝ニコライ他ヨーロッパの貴族たちがこの地に魅せられこぞって休暇を過ごすようにになった。 王族や貴族が姿を消してからはココ・シャネルなどの実業家、映画スターやショービジネスの人たちがとって替わり相変わらずの華やかさだ。
 
世界的な映画祭の第一号としてベネチア国際映画祭があるが、時のファシズムを嫌ってフランスでも立ち上げようと候補に挙がった地が南仏のカンヌとビアリッツ。結果はカンヌに決まって今日に至っているが気候、風土、華やかさではビアリッツも負けていない、と思う。
 
さて、山から下りてそんな海バスクの高級リゾート地ビアリッツへ。 サン・ジャン・ド・リュッツに戻りそこから鉄道でベイヨンヌ方面へ15分ほどでビアリッツ到着。 駅から街までは離れているのでバスで。 街の中心に着いても観光案内所の標識が見当たらない。 カフェでくつろいでいるおじさま二人連れに住所を伝えて聞いてみたが分からない様子。 そこへ通りかかったマダムを呼び止めて訊いてくれた。するとマダム、「あら、私も丁度そこへ行くところよ。案内するわ、一緒に行きましょ。」 海岸に向かってなだらかな下り坂を何度か曲がり、街外れにある観光案内所に到着。 そこは市営のプレイガイドのようなものが併設されていてマダムはコンサートの切符を買いに来たのだ。 彼女は数年前にリタイアしてビアリッツに移住。 美しい街で気候はいいし住み心地は問題ないが新参者にとって溶け込むのは容易ではないそうだ。
 
美しい海岸、ラ・グランド・プラージュ  La Grande Place。 サーファーズ・パラダイスでもある。
 

ホテル、カジノ、映画館、ナイトクラブ、おしゃれなレストラン、カフェ、ブティックなど華やかな街並。
 
老舗のサロン・ド・テ、ミルモン Miremont
 
大きなガラス窓からは素晴らしいビーチが見渡せ、豪華な内装。
 
ラズベリー・タルトと珈琲。 新鮮なラズベリーがたっぷり。その下にあるグリーンぽいミント味のカスタードクリームが絶妙。 コーヒーとミルクもお替りもできるぐらいたっぷり。珈琲にはチョコレートも。
 
ここのウエイトレスが色々話しかけてくれてしばし楽しい時間を過ごした後、お土産にと言ってバスクの観光ガイドブックをプレゼントしてくれた。 中は美しい写真が満載で知らなかった町や村、そし地方地方のお祭りの時期や様子も紹介していて読みでがある。
 
沢山ある洒落たブティックの内、ふらっと入った一軒でバスク織りのティータオル torchon をお土産に購入。


 
駅に向かう途中サングラスのツルが緩んでいたので通りかかったメガネ屋で調整をお願いした。 若い男性店員は気持ちよく引き受けてくれ、わざわざ二階まで持って行ってきちんと調整してきれいに磨いて返してくれた。 礼を言って支払いを頼むと「いいんですよ。楽しい旅を続けてください。」と。 申し訳ないけど心からもう一度お礼を言って別れてきた。 先ほどのマダム、サロン・ド・テのウエイトレス、この人、またあちこちで道を教えてくれた人たち、皆一様に親切で気持ちよい人達。 そうした幸運な出会いのお陰で旅の印象はますます良くなる。 
 
サン・セバスティアンと言い、ビアリッツと言い、バスクには漠然と素朴なイメージを抱いていたのはとんでもない誤解だった。 やっぱり旅には出てみるものだ。 色んな人との出会いもあるし。
 
夕刻ベイヨンヌに戻り駅前のホテルに預けてあった荷物を引き取り、18:21発のTGVでボルド・ーサン・ジャン駅着20:01。 ボルドー駅からはトラムで街の中心にあるホテルへ。 フランスの主だった地方都市にあるトラムは本当に利用者に優しい優れもの。 
 
この時期のヨーロッパの日照時間は長いので9時、10時でも明るく時間が有効に使えて旅行には最適。